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  • バイク便の思ひ出-スパーダ

    バイク板 より

    ネタ提供ありがとうございます

    255 名前:バイク便の思ひ出[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 11:15:14 ID:8/dzONws
    念願だったスパーダの社用車が俺に回ってきたのは、一年後ぐらいだったかな。
    いいバイクなのにあんまり売れなかったせいか、ディーラーが大きく値引きをするようになって、
    ウチの社用車も古いVTを順次スパーダに入れ替えている最中だった。

    「とりあえず、おっちゃんとこ行って一通り診てもらってきてくれ。」
    主任の言う「おっちゃん」とは、近所にある古いバイク屋の店主のことで、
    うちの会社のバイクはほとんどそこでメンテを委託していた。築何十年といった風情の古くて汚い店で、
    「○○輪業」といういかにも老舗っぽい看板を挙げ、おじいさんというにはまだちと若い初老の店主が一人でやってる店だった。

    俺達は某バイク漫画にあやかって店主のことを「おっちゃん」と呼んでいて、絶大の信頼を寄せていたんだ。
    たまに来る近所のおばちゃんの原付を除けば、おっちゃんの仕事のほとんどはうちのバイクの整備で、
    毎日仕事で酷使される歴代VTシリーズを何台も長年看続けたおっちゃんは、この界隈では一番のVTマイスターだった。

    薄汚れた工場の奥には何台もの部品取り用のVTが置かれ、辺りにはエンジンやらミッションやらゴロゴロ転がっていて、
    その気になれば数台組みあがるんじゃないかと思えるほどだった。



    256 名前:バイク便の思ひ出[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 11:16:32 ID:8/dzONws
    「兄さんいくつだい?へえ…うちのセガレと変わんねえな。」
    大学に通っているという自慢の息子さんの話なんてしながら、おっちゃんはテキパキとスパーダをバラしていった。
    おっちゃんの手並みは本当に淀みがなくて、見てると整備なんて簡単そうだなってつい思ってしまったもんだけど、
    そう簡単に出来るもんじゃないってのは後で自分でやってみると身に染みて理解できるんだよな。

    点火時期、タペット調整、キャブの同調…おっちゃんはそういう調整に小難しいゲージなんか使わず、
    いつも目分量だった。「んーこんなもんだろ。」
    実際おっちゃんの「こんなもん」はいつも的確で、特に悪いところなんて無いと思ってた俺のスパーダも、
    一通りの調整が終わってエンジンをかけると、見違えるように静かにアイドリングを始めた。

    「ふん。やっぱりこいつが一番イイな。」
    ストストと軽快にアイドリングを続けるスパーダを眺めながら、おっちゃんはそう言った。
    「え?このバイク、当たりってこと?」
    てっきり個体差のことかと思ってそう聞き返した俺に、おっちゃんは少し首をかしげ、やがて気付いたように言った。
    「え?ああ…そういうことじゃねえよ。ええと…そうだな、アレだ。」


    257 名前:バイク便の思ひ出[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 11:17:50 ID:8/dzONws
    おっちゃんは工場の隅に転がっていたおそらくVT-Fあたりのものだと思われる黒いエンジンを指さして、
    「おめーの先輩方はよ、あのエンジンの方が馬力が出てた。あんなふうにならねーのか?、のせかえられねーのか?
    なんてよく言ってくる。そりゃできねーことはねえよ。でも好きじゃねーな…確かに馬力でてっかもしんねーけどよ。
    いつもゼイゼイ言って、あげくに変なとこが先に壊れちまう。綺麗に終われねーんだ、エンジンがよ。気に入らねえよ。」

    エンジンの中のいろんな部品がバランスよく消耗していく、そういうエンジンが「いいエンジン」と、
    そういうことらしかった。そん時は俺も若かったし、ふーんそんなもんかなって思っただけだったけど、
    今思えば、2ストRZあたりと常に比較され続けたVTの悲鳴を、おっちゃんは聞いてきたのかもしれないね。



    258 名前:夜勤明けの男[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 11:19:41 ID:8/dzONws
    「それによ、何つったってカッコイイじゃねえか、コイツはよ。色もキレイだしよ。」
    まだ真新しい青いタンクをパンパンと叩いておっちゃんは立ち上がった。
    「ま、俺ぁちょっと気恥ずかしくて乗れねーけどよ。」
    おっちゃんはそう言ってカカカと笑い。エンジンを切ってタバコに火を点けた。

    おっちゃんは本当に美味そうにタバコを吸う人で、いつも遠慮なくグッと煙を吸い込むので、
    タバコの先の赤い火の部分がミリミリと音を立てて進んだ。
    俺は正直タバコは苦手だったけれど、おっちゃんのタバコだけはなんかイイなって思ってた。

    「なあ兄さん。いつでも持ってきなよ。兄さんはこれから毎日これに乗るんだろ?
    そしたらよ、わかるはずだ、なんかいつもと違う、そういうヤな感じがよ。どこが悪いってワケじゃなくてもな。
    勘違いだったらそれでもいい。とにかく持ってきてくれよな。」

    「はい。」
    おっちゃんのその言葉を、ちょっとした営業トークぐらいにしか思ってなかった俺は、
    半年後にそれを思い知ることになるんだけど、それはまた別の話だ。

    戯言連投すまん。


    259 名前:774RR[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 11:22:09 ID:mUc7nbbu
    構わん、続けろ

    260 名前:774RR[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 11:46:29 ID:H0KdMKA4
    おおおお!なんかすげーのが来た!w
    続けてくれ!

    261 名前:半年後[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 12:17:04 ID:8/dzONws
    「あれ?」
    俺がスパーダのフロントブレーキに変な違和感を感じたのは、少し肌寒い初秋の朝だった。
    効かないとか効きが悪いとかではなかったけれど、なんだか少しタッチが甘い。そんな感じだった。
    「いつでも持ってこい。」
    おっちゃんの言葉が少し頭をよぎったけれど、その時はまだバブルの余香が漂う頃で、おまけに締め日とあって
    朝から呼び出しのポケベルが鳴り続けていた。とてもおっちゃんの所に寄る暇は無さそうだった。
    「気のせいかな…。」
    俺は無理やり自分を納得させようとした。昨日うっかり枕もとのバイク雑誌を読みふけってしまって
    寝不足だったし、軽く霧がでていたのでパッドがしけっているのかも…何とでも言い訳はできた。

    実際目の回るような忙しさだった。まだ無線を持たせてもらっていない俺はポケベルが鳴る度に
    公衆電話を探して這い回り、そうして午前中はあっという間に過ぎた。

    そして違和感はやはり気のせいなんかじゃなかった。タッチは少しずつだけれど確実に甘くなっていき、
    日が傾き始める頃には何度かポンピングしないと手ごたえが戻らないほどに進んだ。

    不安だった。俺は信号待ちの度にホース周りをキョロキョロと探し、フルード漏れを探した。
    でもどこにも漏れは見つからず、リザーバーの液面も下がっていなかった。



    263 名前:半年後[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 12:35:21 ID:8/dzONws
    何度も会社に連絡しようかと迷った。でもひっきりなしに鳴るポケベルの音を聞くと言い出せなかった。
    怖かった。とてもスピードなんて出せないし、リアブレーキがこれほどアテにならないなんて思いもよらなかった。

    結局フラフラと歩くようなスピードで会社に帰還する頃には、フロントブレーキの手ごたえはほとんど無くなっていた。
    日もすっかり暮れていたけれど、俺はおっちゃんのところへスパーダを押して駆け込んだ。

    主任に頼んで店を開けておいて貰うように頼んでいたので、おっちゃんは作業灯を点けて待っていてくれた。
    「おお、ブレーキがおかしいって?診せてみな。」
    いつものように飄々と、おっちゃんはスパーダに取り付いてブレーキレバーを数回キコキコと動かした。
    おっちゃんの手がピタリと凍りついたように止まった。そしてブレーキを握ったままこっちをギロリと振り返って言った。

    「お前…こんなんで今日一日走ってたのか…?」

    今まで見たことのないような険しい表情と声だった。俺は思わずたじろいだ。
    このときのバツの悪さは今でも忘れられない。俺はしどろもどろになって答えた。
    「あ…朝はちゃんと効いてたんです。でも、どんどん効かなくなって…すいません…。」


    264 名前:半年後[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 12:54:30 ID:8/dzONws
    「なあ兄さん。俺は言ったよな、ヤな感じがしたら持ってこいって、どうして持ってこなかった?」
    優しくて慕ってた学校の先生に厳しく叱られているような感じ、あんな感じだ。俺は懸命に答えた。
    「ほ…本当は朝ちょっと変だなって思ったんです。けど…けど気のせいかなって…自信なくて…
    今日は本当に忙しくて、それで…言い出せなくて……。」
    俺はうつむいて黙ってしまった。

    おっちゃんはふうと溜め息を吐くと、俺のほうに向き直って言った。
    「なあ兄さん。俺はよ、アンタんとこの単車診さしてもらって十年以上になる。
    自慢じゃないが単車ならどんなに壊れたって直してやる。エンジンだろうがミッションだろうがな。」

    それは本当だった。オイルを切らしてブローしたエンジンを下ろし、中古に載せ換えて翌朝にきっちり納車するなんて
    ことは当たり前にやってのける人だった。

    「でもな、でもな兄さん、あんたの…あんたのその……」
    おっちゃんはそこまで言うと色あせたホンダのキャップを深くかぶり、きびすを返して工具を取り、作業を始めてしまった。



    265 名前:半年後[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 13:10:45 ID:8/dzONws
    最後まで言わなくても、おっちゃんの言いたかったことはいくらバカな俺でもわかった。

    「お前の体は修理できねえ。命にはスペアは無えんだ。」

    おっちゃんはそう言いたかったに違いなかった。だけどそれじゃあんまり説教じみていてガラじゃないと思ったのだろう。
    おっちゃんはそれきり黙ってしまった。

    俺は泣きそうだった。今回の故障におそらくおっちゃんに落ち度は無い。
    けどもし、自分の整備しているバイクが故障で事故を起こしたとしたら、昔堅気のおっちゃんはどれほど気に病むだろう。
    俺達が無事会社に還ってくるってことがおっちゃんのメカニックとしてのプライドを支えているんだ。
    おっちゃんだけじゃない。俺と、俺の周りの全ての人達がお互いのプライドを支えている。
    そんな当たり前のことを、俺はそのときやっと理解したんだ。

    「○×町の信号をダッシュで加速して、120kmまでもっていければ、△□二丁目の信号を黄色でパスできる。」
    そんな馬鹿なことを得意げに語っていた昨日までの自分を俺は本当に恥じた。

    266 名前:半年後[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 13:30:48 ID:8/dzONws
    「なあ兄さん。コイツはちっと時間かかっからよ、今日はもう帰んな。疲れたろ?
    心配すんな。明日の朝までには直して届けといてやっからよ。な?」

    そう言って振り向いたおっちゃんの顔はいつもの優しい顔だった。
    「お願いします。」
    俺は頭を下げて言った。その日はいろいろ考えてしまってあんまり眠れなかった。

    翌朝出勤すると、約束通りスパーダは届いていた。真新しいブレーキホースとマスター、キャリパーも
    オーバーホールしたらしくピカピカになっていた。

    マスターシリンダーの圧抜け、それが原因だった。非常に稀なことだけれど、製造時の切り粉や研磨剤といった
    硬い粒子がどこかに付着して混入してしまうと、あっというまにシリンダー内を傷つけてしまうのだということだった。

    おっちゃんはあの後、もう遅かったけれどディーラーに掛け合って部品を出してもらい、
    新品のマスターアッセンを一度バラして入念に洗掃し、同じくキャリパーも洗掃したあとホースを新品に換えて
    組み付けたのだという。

    それから俺は、ちょっとでも違和感を感じたらすぐおっちゃんの所へ行くようになった。
    ただの勘違いのこともあったけど、実際フロントハブベアリングが割れかけていたときは自分でもびっくりしたなあ。


    267 名前:現在[sage] 投稿日:2010/03/04(木) 13:41:30 ID:8/dzONws
    主任からスパーダの話を持ちかけられた時、俺は無性におっちゃんに会いたくなった。
    でもちょっと怖かった。だってあれから20年近く経っている。

    「?ああ、おっちゃんな。えーと5,6年前かなあ、息子さんの所へ行くから店たたむって言ってな。」
    「ん?ああまだご健在のはずだよ。律儀に毎年年賀状と暑中見舞い来るんだ。今年も来てたしな。」

    おっちゃんはどうしているだろう。可愛い孫でもひざに乗せて、美味そうにタバコを吸っているだろうか。




    後半あんまりスパーダ関係なくてすまん。読んでくれた人ありがとう。

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  • 421
    イイハナシダナー

    どこのスレなんだろ…?
    422
    ホントにいい話だな
    423
    いい話だなあ
    俺も15年くらい前、大阪でバイク便やってて
    法円坂からオーバーパスで140km出せば
    四ツ橋筋の交差点を右折できるとかやってた。

    そうしないと玉造、桃谷⇔福島の凸版廻りを一日20件とかこなせなかった。
    (それ以外の依頼も多かったから)

    事故はしなかったけど運が良かっただけで、これ読むと恥ずかしさとかいろんなのがこみ上げてくる。
    424
    ↑いい年して昔は140km出して云々DQN自慢して恥ずかしくないんですか?
    425
    ↑日本語不自由なのか?DQN自慢じゃなくて、そんなことしてたのが恥ずかしいって書いてあるだろ?
    426
    ↑ごめん。昔はこう見えてDQNだったんだぜ自慢とそんな昔の俺を恥じてる今の俺かっこいい自慢だったね

    つかDQN自慢じゃなかったらなんで140kmとか書くの?その心理が判らんのだが
    427
    あと恥ずかしいと言いながら、そのプレイ内容を赤裸々に語っちゃうのもわからん
    もしかして羞恥プレイ好きの変態さんなんですかぁ?↑
    428
    「○×町の信号をダッシュで加速して、120kmまでもっていければ、△□二丁目の信号を黄色でパスできる。」
    って言う本文の流れで書いただけだろw
    食いつきよすぎるなw
    429
    俺もSPADAが初バイクだったな
    小さくて窮屈だけど安くて頑丈ないいバイクだった
    430
    いいなぁこういう話
    431
    俺の知ってるバイク板じゃない
    432
    SPADA手放す前に読めてよかった・・・
    433
    さすがスパーダ
    これからも大事にします(´;ω;`)ブワッ
    434
    スパーダスレより。

    そんな俺は一昨日スパーダのエンジンを乗せ替えました。
    まだまだ頑張ってもらうぜ!
    469
    イイハナシだったよ
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